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仙狐九尾会

#6 因縁浅からぬ狐。

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「ねえ、風璃。アンタ何してんの?」
 上司からの業務連絡で疑心暗鬼に陥った私がオドオドと辺りを見回していると、不意に背後からそんな声をかけられた。
「ほわっ!?」
 私が驚き振り返ると小柄で貧相な身体つきをした褐色肌の少女が立っていた。ふっさりとしながらも狐にしては控えめな尻尾を垂らし、大きな三角獣耳をピンと立てた、少しウェーブのかかった明るい栗色の髪のツインテール少女だ。
「なんだルーシーか、脅かさないでよ」
 彼女は第八席のルーシー、フェネックの仙狐だ。現九尾会の中では一番任期が短い新世代の狐で、私と比較的に歳が近い。その為か、何かと衝突する事も多く、私にとって因縁浅からぬ狐である。
「なんだとは何よ。まず何だを先に問たのはあたしでしょうに!」
 因縁浅からぬ狐、第八席のルーシーはさっそく不満気に難癖をつけてきた。
 だが、ルーシーの難癖はいつもの事なので私は動じない。
「あ、そう。で、何か用?」
「って、おい、あたしの質問はスルーかよ!?」
「だってルーシーに話すと、またややこしくなるから」
「何それ、どういう意味? 余計気になるじゃない。いいから教えなさいよ。第八席としての命令よ」
 相変わらずルーシーは面倒くさい狐だ。大体、九尾会の権限を個人のプライベートを暴くために使っちゃダメだろ。職権乱用もいいとこだ……って言っても、たぶんコイツは聞きゃしないだろうな。仕方ないのでこちらも対抗してこう答えた。
「第九席代行として拒否権を発動します」
 目には目を、権限には権限を。私は所詮代行に過ぎないが、それゆえ代行対象である私の上司以外の命令に上司の許可なく従う必要はない。九尾会メンバーが形式上皆平等であるがゆえ、その代行者に与えられている特権なのだ。ふふん、どんなもんよ、この風璃ちゃん、第九席代行として、簡単には権力に屈しないんだからね。
 私にはルーシーの悔しがる顔が目に浮かんで見えていた。
 しかしながら、そんな私の予想を裏切るように、ルーシーが見せたのは驚き眼であった。
「ちょっとアンタそれ職権乱用よ! 代行とは言え、九尾会の権限はアンタが思っている以上に重いのよ。私的流用は九尾会の沽券に関わるんだから慎まないと!」
 毅然として睨みつけてくるルーシー。私は些か気圧されてしまった。だが、落ち着け私。職権乱用はルーシーもしているのだ。私が責められるのだとしたら、それはルーシーにも言えることではないか。
「ちょ、ちょっと待って、ルーシーが今それ言うの!? 今さっき同じ職権乱用していたルーシーが!?」
 ルーシーは呆れた様子で溜め息を漏らした。
「バカね、あたしのはジョークよ、ジョーク。アンタの口を割るとか、くだらない目的のために本気で九尾会の権限なんか使うわけ無いでしょ」
「あ、ずっこい!」と私はすぐさま対抗する。だって私だけ責められる筋合いはないのだから。
「そ、それなら私だって冗談よ、冗談! ルーシーの追求を躱すなんてしょうもない事のために権限を利用しようなんて思うわけ無いでしょ」
 するとルーシーは「へぇー」と疑念に満ちたジト目を向けて来て、
「本当かなー?」
 私は唐突に非ぬ疑惑を向けられ思わず焦燥に駆られ……いや、そんなわけないじゃない。何度も言うけど、私だけ責められる筋合いはないのだもの。だから先のルーシーに負けないくらい毅然と言い返してやったわ。
「あ、当たり前でしょ! ルーシーをからかっただけだよ。ルーシーこそ、そんな事も気付けなかったの? ダサ!」
「んじゃ、何してたか教えてよ。あたしの追求躱すなんてしょうもない事はしないんでしょ? つまりそれは追求に応じるって事よね?」
「当ぜn……え? あれ?」
 なんか私が想定よりだいぶ違う展開になっているような……。疑問と不安が沸き起こる中、ルーシーが間髪入れずに言い迫ってくる。しかも、私の尊厳に関わる言葉を混じえて。
「なぁんだ、やっぱ嘘なんだ。第九席代行は嘘つきなんだ。それとも、狸だから嘘つきなのかな?」
 私は狸であることに誇りを持っている。その誇りを傷付けられるような真似を黙って見過ごす事など出来ない。思わず強い口調で言い返してしまった。
「あ? 誰が応じないって言った! 応じるわよ、っていうか初めからそのつもりだったし! 狸差別やめてくれる!?」と。
「じゃあ、何してたの?」
「そりゃ――――」
 あれ!?

 ―――――やはりルーシーは因縁浅からぬ狐である。



つづく。
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