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仙狐九尾会

#8 ランチタイムにて。

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 狐とて、生きていれば皆お腹が空く。然るに、ここ仙孤九尾会本部には職務に従事する狐たちのために食堂が併設されている。腕の良い料理人を雇っているらしく味の方は折り紙つき、しかも職員プライスがありリーズナブルに食べられるという事で、狐たちからはかなり重宝されている施設である。
 かくいう狸な私もここの常連でファンであった。


「いや〜、美味しかった〜♪」
 ここ九尾会本部にある食堂で食べるランチは何度食べても飽きないほどに高水準だが、本日はいつにも増して旨かった。
 それもそのはずだ。
 何せ食べたのが、安さが売りの本部食堂に於いて、一食九千円もする『豪華絢爛スペシャルきつねランチセット!(要予約)』という普段では絶対に手を出さない高級メニューなのだから。テレビや雑誌でしか見たことのない高級食材の数々で彩られていたランチセットは、その名に違わぬ絶品で美味。しかも私自身は一銭も払わず、無料(タダ)同然で食べられたとあっては、賞賛はいくら有っても、文句などはつけようがなかった。ま、所謂、他人の金で食べる高い飯は旨い、と言うやつだ。
「うぅ……アンタ、本当にこれでお姉様には黙っていてくれるんでしょうね?」
 テーブルを挟んだ向かい席で恨めしそうに財布を見つめながら、消え入りそうな声で嘆いていたのはルーシー、今日のランチのスポンサーだ。監視疑惑の際に散々私をいびり倒していた彼女は、その愚行を愛しのお姉様に告げ口させぬよう、私に交渉を持ち掛けて来た。その顛末の姿であった。
「安心してよ、狸に二言は無いから」
 私は悠然とそう言って、熱々の玉露を慎重に啜った。
「本当に本当でしょうね? ランチにこんな大金払わせておいて、もし嘘だったら詐欺罪で訴えるからね」
 ルーシーの目尻には微かに光るものが滲んでいた。だいぶ今回の出費が痛手だったようだ。
 とは言え、一応ルーシーは重役に就く狐である。そこまで狼狽えることもなかろうに。
「だから、そう言っているじゃん。っていうか、ルーシーは代行の私と違って、正真正銘の尾席でしょ。相応の収入があるんだから、たかだか九千円程度で私を詐欺師に仕立て上げようとしないでよね」
 私が呆れてそう言うと、
「バカ言わないで! 相応の立場にある者は、相応の出費を免れないのよ! 駆け出し尾席のあたしは、長年いろいろと溜め込んだ金でのうのうと生きる他の重鎮尾席共と張り合わないといけないの。そのせいで、常に金欠なのよ!!」
 ルーシーが半泣きになりながら猛然とテーブル越しに迫ってきた。
「うわっ!?」
 私はルーシーの思わぬ変容っぷりに驚くと同時に、その気迫に負け、逃げるように身を反らした。

 うーん……どうやら地雷を踏んてしまったらしい――――



つづく。
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