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仙狐九尾会

#12 反省した?八尾

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「ふひはへんへひは(すみませんでした)」
 正座姿でほっぺたを摘まれたルーシーが涙を滲ませて謝っていた。
 相手は仙孤九尾会第一席、稲荷神社の総元締でもある宇迦之御魂神。しゃがんでルーシーのほっぺたを摘んでいる銀髪ロングヘア美女である。
「まったく、ジジイはともかくババアはあかんよ、ババアは」
 宇迦之御魂神こと宇迦さんが冷たい笑顔でルーシーのほっぺたを引っ張って言った。些か「怒るポイントそこでいいの?」と狸の私は思わなくもなかったが、とてもじゃないが指摘できるような空気でもなかったので無視(スルー)することにした。君子危うきに近寄らずというやつだ。
「ひははははッ(イダダダダッ)! ほふほひふひはへふへひは(本当にすみませんでした)』
 悶ながら重ねて詫びるルーシー。もはや雄弁に(愚痴を)語っていた先程までの威勢はなかった。
 その変容っぷりに、心配しつつも少し呆れて見ていると、
「まあ、ええわ」
 唐突に宇迦さんがルーシーのほっぺたから指を離した。
「ふわっ!?」とルーシーがバランスを崩してよろける。
「別にルーシーちゃんをイジメるために来たわけやないからな」
 そう言うと宇迦さんは一旦立ち上がってから、私の斜め向かいの席に腰を下ろした。
 そして、
「どや、風狸ちゃん? 九尾会本部(ここ)にはもう慣れた?」
「え!? 私?」
 不意に宇迦さんから笑顔を向けられ戸惑う私。
「そやよ、先刻(さっき)言ったやん、ガールズトークに混ぜて、て。ウチが食堂(ここ)に来たんは、九尾会のまとめ役として、風狸ちゃんの近況を訊くためやさかい」
「……はあ、でも何で?」
「そりゃまあ、風狸ちゃんがここにいるんは特殊事例やからな。風狸ちゃん狸やもん。狐の世界でいろいろと苦労しとるんやないかと心配になるやん。最終的に風狸ちゃんの採用を認めたのもウチみたいなもんやし、アフターケア言うんかな」
「アフターケア……ですか……」
 私が呆けてそう漏らすと、いつの間にか正面席に座り直していたルーシーがほっぺたをさすりながら口を尖らせボソリと言う。
「ちぇッ、なによ風狸のせいであたしはこんな目に遭ったって事? ツイてないな」
「何言ってるん? そこはルーシーちゃんの自己責任やろ。愚痴は周り見て上手く零しいや」
 すぐさま宇迦さんが笑顔でルーシーを睨みつけた。
「ひいッ!?」
 たじろぐルーシーに宇迦さんは続けて諭すように言った。
「それに『ツイてない』はないやろ。寧ろ見つけたのがウチで良かったんとちゃう? 荼枳尼ちゃん辺りに見つかってたら、あんた今頃八つ裂きにされて、うどんのトッピングメニューにでもなっとるで」
 おそらくはその光景を想像したのであろう。ルーシーは少し間を置いてから引き攣った顔になり、「た、確かに……」と乾いた声を漏らした。
「そやろ、ちゃんと反省せんと死ぬで」
「……うすッ、以後気をつけます」
「わかればよろしい」
 どうやら宇迦さんの目的は本当に私だったらしい。思いの外手早くルーシーを鎮めると、改めて私に柔らかな笑みを向けて来たのだ。




つづく。
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