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仙狐九尾会

#13 もしかして根に持つタイプですか?

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「へぇー、今そんなんが流行ってるんやね」
 仙狐九尾会一尾の宇迦さんが目を丸くしながらも楽しそうに感嘆の声をあげていた。
 宇迦さんはアフターケアと称し、狸の私を気遣って様子を窺いに来たらしい。そうした事情もあり元々は私の近況聴取が目的だった筈なのだが、いつの間にか本筋から脱線し、気付けば私たちはルーシーも交え流行のコスメ話で盛り上がっていた。
 実のところ、これまで私はルーシーを除いては九尾会の面々とあまり面識がなく、専ら仕事上の付き合いしかしてこなかった。そのため今回が宇迦さんとまともに言葉を交わす初めての機会である。相手は個性派揃いの九尾会に於いてリーダー的な立ち位置の偉大な狐。狸で代行でしかない私はどうしたってこの狐界のVIPを前に身構えてしまうというもので、気乗りはしていなかった。しかしながら、いざ話してみると宇迦さんは思いの外気さくで話し易く、懐いていたその印象とのギャップからか、つい心を許して余計な事まで口走ってしまうほどだった。それはこの結果だ。
 とは言えだ。別にこちらから頼んだわけでもないので私が気にかけることではないのかも知れないが、わざわざ御足労頂いた相手を手ぶらで帰すのには些か気が引けるというもので、
「あの……私、今のところ大した近況報告していないんですがいいんでしょうか?」
 私は野暮と知りながらも、こうして一度話を蒸し返すのだった。
「ええよ、ええよ。ウチが知りたかったんは風狸ちゃんがちゃんと此処に馴染めているか、いう事で、アンタの活動実態を知りたかったわけではないからね。風狸ちゃんの今のその表情(かお)見たら、もう十分に目的は果たせてるし、ぶっちゃけ今は唯の暇つぶしや」
 暇つぶし!?
 思わぬ答えに呆気にとられる私。
 それを見た宇迦さんは悪戯っぽい笑みを浮かべて、
「ウチの暇つぶし、迷惑? 嫌なら言ってな、ババアは空気読んで立ち去るさかい、バ・バ・ア・は」
「ひぎッ!?」
 向かいの席のルーシーが関係ないのに小さく声をあげ、それを受けて私も反射的に少し身を縮ませてしまう。
「ん?」と意味深に小首を傾げる宇迦さん。
「全然、迷惑じゃないです」
 私は慌てて否定する。
「なら、ええんやけど。でもほんま嫌やったら言ってな。陰でババア言われるくらいなら、ウチ喜んで出て行くさかい」
 チラリとルーシーを見ると顔面蒼白で苦笑していた。
「はははっ、言いませんよ」
 私は精一杯陽気に答えた。
 そして同時に、しかと心に誓うのだった。
 宇迦さん(このひと)にババアは禁句、決して口にしないようにしよう――――――と。





つづく。
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