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仙狐九尾会

#14 ささやかな疑問のはずが……。

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「そう言えば、何で九尾会の狐はみんな普段から人に化けて活動しているんですか?」
 私はふとそんな疑問を口にした。
 今はまだ昼休みの真っ只中。宇迦さん、ルーシーとの雑談の最中での事であった。
「どしたの風貍、急にそんな事訊くなんて?」
 ジト目のルーシーが蛋白に言った。
「いや、なんとなく。狐の組織なのに常日頃から人の姿で業務をこなしているのって、よくよく考えたら何でだろう?って」
 九尾会が管理する各施設というのは原則として人の姿を模していなければ入れない。そういうルールが存在する。初めてここを訪れた際、それを言い渡された私は他種の庭という事もあり、郷に入りては郷に従え精神で言われるままに受け入れたのだが、思い返せば理由を聞かされていなかった。まあ、狸の私はその方が目立たずにいられるので有り難いし、知らなきゃ知らないで支障は無い。唯、本来は狐だけの場所なのだから、わざわざ人に化けずとも狐姿のままでよくないか、と思ったのだ。
「何を今更。決まってるじゃない、そんなのあれよ、あれ」
「あれって?」
 嘆息して勿体振るルーシーに私が急かすように訊ねると、
「だからあれよ……宇迦さん言ってやって」
「アンタも知らんのやろ」
 透かさずツッコミを入れる宇迦さん。
「いっ!?」
 ルーシーはそっと視線を逸した。
「なんだ、ルーシーも知らないんじゃないの」
「か、勘違いしないでよね。私は知らないんじゃなくて、うっかり忘れているだけよ。ほら、さっきまで色々あったじゃない? 気が動転して一時的に失念しているっていうのかしら……」
 異様に目を泳がせるルーシーに、
「そない必死になって誤魔化さんでもええやろ。今日日そんなんいちいち説明なんかしてへんし、知らんでもおかしないからな」
 宇迦さんが苦笑気味に言った。
「うっ……」
 きまりが悪そうに呻くルーシー。
 とりあえず見栄っ張りのルーシーは放っておいて、私は改めて訊ねた。
「で、どうしてなんです?」
 すると宇迦さんは急に伏し目がちになったかと思うと重苦しい口調で言ってきた。
「どうしても知りたい?」
「え!? あの……」
 いきなり敬遠な態度を取られたという事もありたじろぐ私。知りたい気持ちは山々だが、思わずどもってしまう。
「知りたいっちゃあ……知りたいですけど……九尾会的に不都合があるのならば……無理にとは……」
「別に九尾会的に不都合があるいうわけちゃうんやけど……」
 宇迦さんは見るからに顔を曇らせてそう言うと、「ただな……」と意味深そうに付け加える。
「ただ……?」
 遠慮がちに私は聞き返した。
「今は拙いねん」
「今は……!?」
「そう今はな……」
「時間が関係しているんですか……? お昼だから……?」
「そうやないねん……」
 宇迦さんは歯切れの悪い返答を繰り返していた。
 う〜む……。
 九尾会の重鎮がこうも渋るという事は余程重大な問題が絡んでいるということか。いやしかし、九尾会の事で九尾会的に不都合がないのに、こうも渋るものだろうか。それに立場上NOと言えばそれが問答無用で通るはずなのに、なぜ故はっきりと拒否しないのか。なんというか、釈然としない事が多過ぎる。これでは、私としては引くに引けないというものだ。
 私は更に「結局、何が問題なんですか?」と食い下がって訊ねた。
 すると宇迦さんは流石にこれ以上はぐらかすのは気が引けたのだろうか。「そやな……」と小声を漏らしてからいっそう重い口取りでこう言ったのだった。
「あんな……ルーシーちゃんがアホ丸出しになってまうねん」

 ……………………………………………………………。

「「えっ……!?」」
 数秒の静寂があった後、そんな声を漏らしたのは意外な返答に困惑した質問者の私であり、唐突に名指しされたルーシーであった。
 私はすぐにルーシーへと顔を向ける。すると、そこには首を傾げて目を点にした、なんとも言えぬ間抜け顔が待っていた。その全く身に覚えがなさそうな本人の姿に混迷を深める私。
 意味をはかれずに呆けていると宇迦さんは繰り返すように言った。
「せやからな、今ここで理由(それ)を口にしたらルーシーちゃんがアホ丸出しになってまうねん。そんなん不憫やん」

 ……………………………………………………………。

 再び暫しの静寂があった後、今度はルーシーのみが荒げた声を上げる。
「何であたしが!!!?」




つづく。
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