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仙狐九尾会

#15 勿体ぶっていましたが……

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「何であたしがアホ丸出しになるんですか!? 不憫になるんですか!? そもそも、あたし理由も知らないんですよ! 知らない事がアホ丸出しなら解りますが、知ったらアホ丸出しで不憫って、意味解らないんですけど!!」
 ルーシーが半ば声を荒げて宇迦さんに言い迫っていた。
 私達は『仙孤九尾会の狐達はなぜ人の姿で活動しているのか?』、この古くからある謎ルールの理由に迫ったはずだった。
 それを、ルーシーが「アホ丸出しになる」からと、宇迦さんは回答を保留したのだ。
 ルーシーはその理由を知らない。加えてこの謎ルールはルーシーの半生よりも遥かに歴史が深く、実質的に彼女とは無関係と見るのが妥当のはず。にも拘らず、その真意の露呈がなぜか無関係のはずのルーシーをアホにするというおかしな矛盾。その脈絡の無さにルーシーが不満を懐きたくなるのも無理からぬものであろう。
 そんな至極真っ当とも謂われるルーシーの咆哮に、宇迦さんは片手を頬に当てながら困った様子で応えた。
「せやかてなぁ……」
「いや、その『せやかてなぁ』が意味解らないんですよ。何がどうなったら、あたしがアホ丸出しになるんですか!?」
 ルーシーが食って掛かると、尚も渋るように宇迦さんが訊ねた。
「知りたい?」
「そりゃ知りたいですよ!」
「でも、話したらルーシーちゃんはアホ丸出しやで?」
「ぐぬっ」
 僅かにたじろぐルーシー。しかし恥よりも探求心が勝ったのだろうか、苦虫を噛んだように奥歯を噛み締めながら、すぐに言葉を捻り出した。
「……い、いいですよ」
 そこにはルーシーの並々ならぬ決意が滲み出て見えた。
 とはいえ、その後小声で「い、いや先ずアホ丸出しになるとは限らないし……実際そんな心当たりないし……」と自分に言い聞かせるように漏らしているところを見ると、ルーシーの心の迷いが払拭されたわけではないなさそうであった。
 ともあれルーシーの気概に心打たれたのかは分からないが、宇迦さんは「ルーシーちゃんがそう言うならかまへんけど」と承諾して、仙狐九尾会謎ルールの理由を話し始めた。
「あんな……理由やけどな……」
 勿体ぶるように文節を区切ってゆっくりと語る宇迦さん。散々渋られてのこれである。私とルーシーは思わず急かすように復唱していた。
「理由やけど?」
「実はな……」
「実は?」
 宇迦さんはここで更に態とらしく深呼吸を挟む。
 じれったい。
 私とルーシーは「ゴクッ」と仲良く固唾を飲み込んだ。
 すると漸く宇迦さんがその根幹を口にする。
「特に理由は無いんよ」と。

 ……………………………………………………。

 私達は沈黙した。
 何せそれは予想外の回答、ともすれば根底から色々と覆るようなものであったからだ。
 私は只々唖然とし、ルーシーもぱっくりと口を半開きにして蝋人形のように固まってしまったのだ。
 十秒ほどあった後。
 周囲の狐たちが織り成す雑談の数々がBGMとして木霊す中、この限定的静寂を破ったのは、キリッと眉を吊り上げ、鋭いジト目のルーシーが張り上げた、
「ちょ、まてや!!!」
 との声だった。
 


つづく。
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