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仙狐九尾会

#16 とりあえず納得?

 ←#15 勿体ぶっていましたが…… →#17 ピンチの後にはアレがある。
「いい加減にしてください!」
 ルーシーが再び荒ぶっていた。
 仙孤九尾会の謎ルールに迫った結果である。二度目なので以下省略。
「こっちは真面目に訊いてるんですよ。真面目に答えて貰わないと!」
 吠えるフェネック仙狐ことルーシー。その威圧に、わずかとは言え珍しくたじろぐ様な仕草を見せながら、九尾会の重鎮、銀毛の仙狐こと宇迦之御魂神が苦笑まじりに言った。
「ま、真面目に答えたつもりなんやけど……」
「どこがですか!? 散々勿体ぶって理由が無いとか、ふざけてるでしょ。大体、理由が無いのにアタシがアホ丸出しになるって、完全にあたしの事、からかっているだけですよね?」
 ルーシーの眉は両端共に吊り上がっていた。
「それは誤解やで、ルーシーちゃん」
 宇迦さんがそう言って制すると、ルーシーの片眉が更に吊り上がった。
 僅かにだが慌てたように宇迦さんが付け加える。
「だって先刻(さっき)ルーシーちゃん、必死で知ったかぶっていたやん? 必死で知ったかぶっていたのに、それが理由もへったくれも無いものだとわかったら、ルーシーちゃんの立場ないやろ。アホ丸出しになってまうと思うやろ?」
 ……まあ、確かに。
 私は得心して頷いた。
 だが、当の本人であるルーシーはそうもいかなかったのだろう。その顔はたちまちにして羞恥の紅色へと様変わりしていき、そのまま心ここに在らずといった様子で黙り込んでしまった。
 その哀れな姿を見兼ねた私は、そっと声を掛ける。
「ま、まあ知らなかったんだし、しょうがないよ」
 するとルーシーは、私の声に反応した……のかは定かではないが、不意にガタンッとテーブルに手をついて勢いよく立ち上がると、身を乗り出して宇迦さんに詰め寄った。
「で、本当のところはどうなんです? 理由は何かしらあるはずですよね? 教えてください!」
「え? せやから無いって……」
「またまた〜。このルール、千年以上前からあるんですよ。あるでしょ、理由の一つや二つ。例えば、最低限ヒトに化けられる程度の技量がないと会員として認められないから、とか」
 自ら理由を発案、提示し始めるルーシー。最早それは現実逃避と呼べるのではなかろうか。ともあれ、見ているこちらが辛くなるような、その哀れな姿に耐えかねて、私は堪らず目を伏せた。
 一方、宇迦さんはというと、聞き分けのないルーシーに嫌気がさしたのか、はたまた単に呆れ返っただけなのか。蓋を開けて一晩放置した炭酸飲料みたいに気の抜けた声で、
「あーはいはい。もう、それでええわ。ヒトに化けれん狐は九尾会に相応しないって事にしとくわ」
 それは明らかに投げやりな対応であった。
 これには流石に狸で傍らにいるだけの私とて横から苦言を呈したくなる。理由がない時点でそれを望むのはおかしいのかもしれないが、一応は歴史ある仙狐九尾会のしきたりの事である。もう少し真摯な返答で応えるべきではなかろうか、と。
 しかしながら真実から目を背けたルーシーは、そうは思わなかったようだ。
「な~んだ、やっぱり理由はあるんじゃないですか」
 誰がどう見ても明らかに嘘(フェイク)なのに、晴れやかな笑顔でそう返していた。
 宇迦さんが宇迦さんなら、ルーシーもルーシーだ。幾ら真実を受け止められないからとはいえ、本当にそれでいいのかと、こちらはこちらで思わず疑問をぶつけたくなる。
 もっとも私はそうした気持をぐっと心内に抑え込み、表に出す事はしなかった。何せ私としては当初の目的、即ち仙狐九尾会において古くから続く謎ルールに対する疑問の答えを得る、という事に関しては既に完遂済みである。つまりは、もはや宇迦さんのその場しのぎやルーシーの見栄っ張りに付き合う必要が無いのである。当人達が各々不満を抱えて対立を続けるのならばいざ知らず、このまま歪でも丸く収まる事を望むというのであれば、わざわざ重箱の隅を突いて話を蒸し返すような無駄多き真似をしようとは思わないのだ。
 そんな訳で黙って様子を伺っていると、やがてルーシーは弾んだ声で「いやー、有意義な時間を過ごせたよ。それじゃ、そろそろ昼休みも終わるし、あたし行くね」と一方的に言い放って立ち上がると、私や宇迦さんの応答を碌に待たずして、颯爽と立ち去っていってしまった。
 ほんの少し前まで怒りを顕にしていたとはとても思えない潔い切り替えっぷり。それは呆れを通り越して、尊敬の念さえ懐きたくなる後ろ姿だった。
 ともあれ、これでこの話は終わりである。
 そう油断して偉大で矮小なフェネックの背中を見送っていると、脇にいる宇迦さんが独り言のようにボソリと呟いた。
「やれやれ、巧く誤魔化せたな……」
 え!?



つづく。
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